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fermongの万年筆

本、映画、街歩きで見た、聞いた、感じたことについて

映画レビュー Vol.2 大傑作「ミッドナイト・ラン」はどう面白い?

こんにちは、fermongです。

1988年公開のアメリカ映画「ミッドナイト・ラン」を鑑賞しました。映画ファンを自称する者として、なぜこれほど面白い映画を見過ごしてきたのだろうと恥ずかしくなるほどに面白い映画でしたので、ご紹介します。

 

 

基本情報

孤独なバウンティ・ハンターと彼に追われる心優しき犯罪者との、逃避行の中で芽生える友情の絆をコミカルに描く。エグゼクティヴ・プロデューサーはウィリアム・S・ギルモア、製作・監督は「ビバリーヒルズ・コップ」のマーティン・ブレスト、脚本はジョージ・ギャロ、撮影は「ゴールデン・チャイルド」のドナルド・ソーリン、音楽は「バック・トゥ・スクール」のダニー・エルフマンが担当。出演は「アンタッチャブル」のロバート・デ・ニーロ、チャールズ・グローディンほか。

引用元:

eiga.com 

レビュー

あらすじ(ネタバレなし)

 シカゴ警察を引退した後、ロサンゼルスで犯罪者をしょっ引いては賞金を稼ぐ、バウンティ・ハンターとして生計を立てるジャック・ウォルシュ(ロバート・デ・ニーロ)。彼の元に、保釈金融会社社長のエディ(ジョー・パントリアーノ)からある依頼が舞い込みます。その依頼とは、ラスベガスの大物マフィア、ジミー・セラノ(デニス・ファリーナ)の資金を横領し、慈善事業に寄付してしまった会計士、ジョナサン・マデューカス(チャールズ・クローディン)を5日以内に連れ戻してくることでした。セラノは当然マデューカスを追いかけ、殺そうとしているのですが、依頼主であるエディはマデューカスに大金を貸しており、彼が戻ってこないと会社が破産してしまうというのです。マフィアに殺される前に連れ戻せ。それがエディの依頼でした。

 10万ドルという報酬から仕事を引き受けたウォルシュは、警察内のコネを使ってマデューカスがニューヨークに潜伏していることを突き止めます。その帰り道、彼はFBIのアロンゾ・モーズリーヤフェット・コットー)捜査官に、マデューカスに余計な手出しはするなと忠告を受けます。マデューカスの証言によって、セラノの罪を暴くことができるからです。その忠告には耳を貸さず、ウォルシュは無事ニューヨークでマデューカスを確保、早速飛行機でロサンゼルスに戻ろうとします。ところが出発直前にマデューカスが飛行機は怖くて乗れない、と騒ぎ出し、飛行機からつまみだされます。仕方なくウォルシュは、彼を陸路でロサンゼルスまで連れて行くことにします。 それを知ったエディは間に合わない不安から、別のバウンティ・ハンターであるマービン・ドーフラー(ジョン・アシュトン)を差し向け、彼らを追わせます。かくして、ウォルシュとマデューカスは、FBI、マフィア、そしてバウンティ・ハンターの3者に追われながらロサンゼルスを目指すのでした。

見どころ(ネタバレあり)

練りに練られた脚本

 この映画の面白いところが、追ってくる者が必ずしもウォルシュ達の完全な敵ではない、というところにあります。そこに協力の余地が生まれるんですね。まあマフィアは完全な敵なんですが、FBIはマフィアを捕まえることが第一の目的ですし、そのためならウォルシュと力を合わせることも厭わない。マービンとウォルシュは旧友で、一緒にマフィア相手に戦ったりもする。単に追って追われての関係が120分延々と続くわけではなく、両者の駆け引きが要所要所に仕込まれていて、観客を決して飽きさせないわけです。マフィアが追ってくる。それに対し、敵とは限らないFBIとマービンをどう利用するか。その頭脳戦の物語でもあるわけです。

 伏線回収も見事でした。特にそう感じたのが、マデューカスがマービンに連れ去られ途方にくれたウォルシュがコーヒーショップでタバコを吸うシーン。店主からマッチをもらい、観客の視線がウォルシュの手元に集中します。そこに、1つのサングラスがカウンターを滑ってきます(カメラの手前なので誰が飛ばしたかはまだわからない)。流れていた音楽もピタリと止み、このサングラスが重要なアイテムであることを示します。ここで観客は、このサングラスは何だ、とこれまでの記憶を辿るわけです。そして観客の多くが、ウォルシュがFBIの車に残していったサングラスだ、と気付いた段階でFBIのモーズリーの姿が映し出されるのです。伏線を観客の手で回収させるこの感じ、実に気持ちいいです。「シックス・センス」のクライマックスもそんな感じでしたね。結末が語られるまでにちょっと間があって、その間観客にその意味を考えさせる。初見だからこそ味わえる感覚ですよね。

個性的、そしてどこか間抜けなキャラクター達

 この映画が頭脳戦には全く見えない理由が、追う側のキャラクターが全員間抜けで愛らしいんですよね笑。絶対悪であるはずのマフィア側の追手ですら、ウォルシュに向かって「そのコートいいね、どこで買ったの?」と真面目に尋ねたりもするし、ボスに電話する相棒に向かってちょっかいをかけたりする。そのやりとりが見ていて和むんですよね。マービンもそうです。彼がウォルシュ達を追って電車に乗り込み、通路を歩いてくるシーン。本来なら逃げ場のない電車内での緊迫した場面であるはずなんですが、そこで流れるのが非常にのんびりとしたBGMで、思わず笑ってしまいます。FBIのモズリーなんかもその最たるものです。サングラスをかけたいかつい風貌なのですが、行く先々でウォルシュに奪われた身分証を使われてしまっていて、それが判明した時の彼や部下の表情がとても笑わせてくれます。

80年代アメリカの、どこか懐かしい風景

 この映画では主人公が動き回るので決まった舞台があるわけではなく、区分上でもロードムービーに分類されます。しかもニューヨークからロサンゼルスまで陸路で移動するということですから大変な大移動です。文字どおりアメリカ横断です。ニューヨークからAmtrakという長距離鉄道に乗りオハイオへ。そこの田舎町でバスに乗り換え、一転して大都会シカゴ。そこから郊外の住宅地に住むウォルシュの元妻と娘の元へ向かい、その後テキサスの田舎町でお金がなくなり、エディに送金してもらいます。ここのレストランでチョリソーのシーンがありますが、チョリソーはメキシコから入ってきた料理で(元はスペインですが)、メキシコに近い南部でよく食べられるんですね。あのシーンは、全く土地勘のない、それどころか聞いたこともない料理が食べられているところまで来てしまった、という2人の大移動を象徴する場面だと思います。

 風景が80年代アメリカの都市、郊外、田園、荒野へ、移動手段も飛行機、鉄道、バス、自動車、貨物列車と多様に変化し、観客の目を楽しませてくれます。そして登場する車や服装も時代を感じさせ、どこか懐かしい印象を受けました。

 

最大の魅力: 2人の友情

 この映画の最大の魅力といえば、やはり主人公2人の友情でしょう。最初はいがみ合っていたも最後にはグッとくる別れに至る2人ですが、決定的に打ち解ける機会があったか、というとそうではない。深夜の道路を走る車の中で、賄賂を断ったウォルシュの過去を知るマデューカス。ここで打ち解けたかな、と思ったら、その後テキサスのレストランではウォルシュのことを「金の亡者だ」と珍しく感情をあらわにしながら罵ります(初めてマデューカスがFワードを使う場面でもあります)。はっきりとした境界は存在せず、ただ長い間一緒に過ごし、衝撃的な経験を共有することで育まれるこの友情。多くの男性の憧れでもあります。

 いがみ合っている時の2人の掛け合いも面白いですね。特に列車でチキンを食べるウォルシュとマデューカスのやり取り。「なぜそんなもの食べるんだ?」「なぜって?美味しいからさ」「でも体に悪いぞ」「知ってるさ」「体に悪いと知ってるのになぜ食べるんだ?」…大食いの人なら耳が痛くなる会話ですね笑。他にも「つらい」と言った言ってないお前が言わせたんだの口論とか…。会計士ということもあって理路整然と物事を考えるが、時に大胆な行動にも出るマデューカスと、やや短絡的にものを考えがちなウォルシュ。でも2人に共通するのは両者ともに、お金よりも大事な彼らなりの「正義」を持っていることだと思います。ラストにはウォルシュはお金を得ることを諦めマデューカスを解放しますが、ここでも彼の正義がお金に勝っています。途中金に目がくらみながらも、マデューカスの存在を通じて自分なりの正義を押し通したウォルシュ、あっぱれです。

 それにしてもラストの、"See you in the next life" はまさしく名台詞ですね〜。全く同じことを貨物列車に乗り込むシーンでも言っていたんですが、その時は結局ウォルシュが乗り込みに成功してすぐに再会します。でもこの時は…。彼らは文字どおり来世まで再会することはないのでしょうね。でもだからと言って彼らの友情は崩れることなく、彼らの心に生き続けるのでしょう。憧れるなあ。

まとめ(ネタバレなし)

 普段のデニーロとはちょっと違う一面も見られるこの映画、これまで見た映画でもトップクラスに面白かったので、鑑賞されることを強くお勧めします!